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高校演劇'11〜兵庫県大会編〜

第55回兵庫県高等学校演劇研究大会・中央合同発表会の舞台は、ピッコロシアター大ホールでした。

何年か一度、巡ってくるこの舞台。
阪神支部は支部大会の舞台ですが、他支部にとっては憧れの舞台です。
何しろ、近畿大会を催せるほどの大舞台にして、これ程、恵まれた舞台は他府県にもそうありません。

今年も但馬支部が欠場で15校の上演。
残念ながら今年は大会2日目と3日目しか観る事はできませんでしたが、その中からいつも通り気になった作品をピックアップ致します。

今年は訳あって上演順での紹介です。

■滝川第二『体育祭!〜得点板のある丘で〜』
現代高校生ものの滝二は初めてかも

得点板の裏で事件の真相に迫る!
滝二と言えば、いつも時代物。そんな印象がある。
けれど、今回の舞台は体育祭。そして登場するのは、体育祭実行委員の面々。
大人の役じゃなくて等身大の高校生だからか、去年の『「竹屋」離れの青春』よりも良い感じがする。それでも、『君死にたまうことなかれ』(舞台は昭和20年だったか?)に比べるとパワーは落ちてます。
結局、演じられるか否かは、簡単か難しいかじゃなくて、どれだけ真摯に向き合えるか。

そういう意味ではいまいち、あと一歩、パンチ力が無くて残念だったかなぁ。
高校生役で体育祭という舞台、もっとやりきれる要素があったように思うのです。

ラストシーンも全員が台詞で全部出し切ってしまったりせずした方が、観客へ余韻と空想を与える空白になって良かった気がします。
でも、得点板を回転させて裏側を表現した転換は流石でした。


■県立伊丹西『渦の中の私』
伊丹西、二年連続の最優秀賞

糸電話で繋がるこのシーン。今思えば、そもそも抽象的なわけで……
意味ありげなシーンの繋がり。
ふと過ぎってしまったのは、去年の『境界線二〇一〇』。
結局、私は、この作品を過去に囚われて観てしまったのが良くなかったのかもしれません。ここ数年の伊丹西は、いつも違う方向で違うチャレンジをしているのですから。

最初から全てに意味を求めてしまったことが、結局、“わからない”という結末を招きました。

なんだか意味ありげに重ねてきたものを、最後の最後で放り出して、全然違う方向に走り出した感じ。
ぶっ壊してと言うより、観客なんか放り出して、みたいな。

けど、よくよく考えてみるとこの作品は、全てが抽象なんじゃないだろうか?
だとしたら、全てが具象であった『境界線二〇一〇』と同じラインで観てしまったのは間違いで、何も見えないことに陥りかねない。
あの公衆電話も、ダイハード3みたいな話も、糸電話も、バッタ病の兄も、全て抽象だとしたら?

近畿大会に駒を進め、近畿では春季高校演劇フェスティバルへの推薦を得たわけですから、ちゃんと評価されるポイントがあったと言うこと。
真っ白な気持ちでもう一度観る機会があったら、何か違う感想を描けたのかなぁ???


■六甲学院『まもる君、あー、GO!』
観客を熱くさせるだけでは近畿に届かないのかッ!?

「国際救助隊」ならぬ「国内救助隊」の面々
去年に引き続き、客席を最も沸かせたのは(おそらく)この作品です。
でも、面白だけじゃ兵庫県を制することはできない、そういう結果を残した作品かもしれません。

いくら観客席を沸かしても、それだけではダメ。
「お金を払って観られるようなお芝居ではダメ」ということなのかもしれません。
そこに、“何か”がなければ。

いや、もちろん、“何か”はあるわけです。
先の震災を真正面から扱った作品。それも上手く昇華されていて素晴らしいと思います。
作中では次の震災が発生して、私などは、南海地震が過ぎってしまい、少し怖いほどです。
けど、演じてる側が、その地震やその他の現実と正面から向き合えていない気がします。

少年は、震災で心に深い傷を負った様子なのですが、それが表現しきれていない。
そういう闇の部分と、対になる希望。

小学生の少年から、青年、中年、所長まで、広い年代を無理なく演じたのは、この六甲だけでしょう。
だからこそ、もっと深いところまで掘り下げて欲しい。
六甲の次のステップに期待です。


■県立洲本実業『時間旅行者たち』
15作品中の異色作は、思わぬ伏兵!?

夕日が差し込んできたSF研究会の部室
最終日の講評は舞台で行われる為、公開講評となります。
今年の講師審査員の先生の一人は竹内銃一郎先生でした。
その竹内先生が高い評価をしたのが、ここ、洲本実業のお芝居です。

おそらく聞いていた高校生たちの多くが「えっ?」と思ったに違いありません。
他の作品とはあまりに違い、事件も起きないし、何かを伝えたいとも言わない。観客を笑わせたりもしない。
でも、他の作品と同じだったのかもしれません。
台詞の間には、「事件」や「伝えたいこと」があったのかも……。

他のお芝居と見比べて、“実は一緒なんじゃないか”と思ったり。


■県立武庫荘総合『サヨナラブライド〜See you Love lie'd〜』
武庫荘総合は健在なり

カフェで行われる結婚式の準備中
意外にも武庫荘総合について書くのは初めてのようです。
阪神支部から勝ち上がってきただけあって、演技のキレや声量、観客に物怖じしない態度は素晴らしいものがあります。
笑わすところは「笑わす」という計算があって、どんなに受けようとも演技は止まらない。

基礎的なレベルはとても高いんです。
でも、いつも、印象が薄いのもまた事実。

何て言うか、物語に深さがない。
展開が読めてしまう以上に、深さ、引っかかり、気になること、そんなところがない。
生徒創作ならもっと刺々しくても良いんだろうけど、そんな刺々しさもない。
綺麗に均されてしまった感じ。

そんなことに、今回ハッと気がつきました。
演劇は、美しい物語をみせる以上に、観客の心に何か残さないとダメなのだと思います。
それさえクリアできれば、グンと良い作品になるんじゃないだろうか、と。




う〜ん、ちょっと創作台本のインパクトに欠けるかなぁ?という感じでした。
特に生徒創作が活き活きしている年は違います。
時に鋭利に突き刺さったり、独創的な舞台だったり、“えっ、マジで!?”と思わせるのは、顧問創作(合作・潤色)よりも、生徒創作だったりします。

もちろん、演劇部は大会にだけお芝居をつくるわけじゃありません。
別の場所で別の舞台で別のお芝居を公演することもあるわけで、そんな中でキラリと光る生徒創作もあったりします。

まぁ、大会にだけ全力を傾ける、なんてのはナンセンスですからね。
それでも来年は、もっと意欲的な作品が多く出て来ることに、期待してしまいます。

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