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アイフェス!!と春期発表会'11

2年振りにアイフェス!!と春期発表会をちょっと覗いてきましたっ!

アイフェス!!はAI・HALLで行われる伊丹市中高演劇フェスティバル。
春期発表会は、ピッコロシアター中ホールで行われる阪神支部春の発表会。

今年は、はるぷれ(於ソニックホール)にも行きたかったのだけど、こちらは日程の都合上参加できず。。。
神戸高校のひとり芝居(多分)はどんな感じだったのでしょう???

さて、そのアイフェス!!と春期発表会の様子を少しだけご紹介致します。

■県立伊丹北『up side down』
胸に刺さる台詞とドキドキしっぱなしの60分っ!

完全暗転の中、机上のスタンドが点く
完全暗転を使う。
それは、ここAI・HALLだと、高校演劇でもそう珍しいことではありません。
しかし、それを効果的に使いこなすとなると、話はまた別。
私自身、小劇場系の演劇も観に行きますから、完全暗転自体はそう珍しいものでもありません。
しかし、得てして小劇場にはホリゾント幕が無く、完全暗転とホリゾントを利用するとなると、あまり経験はありません。

完全暗転から始まったこのお話は、スッとその中へ引き込まれていきます。

アメ、リンゴ、フネという三人の女子高生から吐かれる台詞は、おそらく作家が自分の身体から切り出したもの。
鋭く鋭利な切れ味ではないが、荒っぽい削りの刃物(もしかしたら石器かも知れない)は、グサグサと観客の心に突き刺さる。それは一種の色気すらまとっていて、ドキドキしっぱなしである。
私自身も近いことを考えるからかも知れない。そういう“悩み”。

バレンタインデーのお返しや、勉強・進学、空飛ぶ飛行機、恋愛──。

アイフェス!!は写真撮影不可なので、絵を描いてみた。
完全暗転から、上手側の机のスタンドが点き、パッとフネの勉強するシルエットと、上手側のパネルが現れる。
ハッとした。
完全暗転の中で本火を使うのと同じくらいグッと来て印象的。(それを絵で表せているかは微妙ですが……)

その後、上手からアメが入ってきて、のぞき込み、徐々にホリゾントが明るくなっていく。
二人のシルエット。
アメが下手の自分の席につく頃には、地明かりが明るくなり始め、アメも同じようにスタンドを点け机に向かう。

徹夜明けなんだ。
そんな説明は一切無いけど、そう感じさせる演技と演出。

“もう十分に明るくなったんだね”と思ってたら、リンゴが入ってきた後、更にフネが部屋の電気を点けるという演出付き!
恐れ入りました。

また、随所に挿入された航空機の音と、その度に窓から外を見上げるアメの演技も秀逸です。
いくつも設置されたスピーカーを利用して、爆音が下手前方より上手の客席後方へと抜けていきます。まるで飛行機が飛び去ったかのような音の立体感。

そう、この作品は“立体感”が何とも言えません。
音だけでなく、照明も、舞台の奥行きを利用した美術も。
それが、三人のアメ、リンゴ、フネの立体感(存在感)にも通じている気がします。

県大会の『そら とぶ ひつじ』では不完全燃焼だった部分が全て解決してる!
書き手としても演出としても役者としても(しかし三役とはっ!!)しっかり進化しているのです。素晴らしい。
次にD道さんが公演されることがあるなら、是非観に行きたい!!と。

ただ、春季発表会のピッコロ中ホールでは、同じような効果が得られなかったのが残念です。
奥行きのない舞台をどう使うか?という点もそうですが、もっと根本の部分、音響(爆音)の迫力のなさは解決できたはずなので、ちょっと残念。
照明も、いっそのこと、もっとシンプルにした方が効果的だったかもしれません。
いえ、AI・HALL版も十分にシンプルなのですが、ホリゾントが使えないなどの差異がありますから、また違ったシンプルさが必要だったかなぁ?と。

4月14日には、ハッピーエフエム伊丹でアイフェス!!終了後の取材が放送されるそうです。
9:00〜と13:30〜の2回!コミュニティFMなので、多分、一緒の内容でしょうね。
聴いてみたいなぁ。
でもまさか、聴くためだけに伊丹へ行くわけにも行きませんしね(苦笑)。何か良い方法はないものか。

ちなみにAI・HALL版のラストは、三人のシルエットが台詞に飛行機の爆音が重なり、目つぶしと共に消えていきました。
そして客席には良い作品を見たあと特有の熱気があったのです。


■県立伊丹西『にがい雪』
出演者は多いけど、小劇場向きの作品かもしれない。

伊丹西っぽいドタバタももちろんあります。
アイフェス!!では“???”で良くわからなかったのですが、春季発表会で一気に氷解した感じがします。
この戯曲の難しいところは、2場にエピローグが挿入されていること。しかも、その2場は主人公の葵が初めて登場する場面であったりします(笑)
何故そういう構成になったのか、というのはおそらく、もうひとつある話の筋のエンディング「ファッションショー」を最後に持ってきたかったからでしょう。
要するにお祭りですね。

この物語は(いくつかの例外を除いて)美術部の部室で進んでいきます。
2場は、葵が一人部室にいて、そこへ幼馴染みの沙穂が入って来ます。
「昨日はごめん」
アイフェス!!で観て翌日の春季発表会でこの台詞が出た瞬間、ハッとし、全てが繋がりました。2場にエピローグがあるとは、なんと観客に優しくない構成でしょう(笑)

5場だったか6場だったか──。
自分の絵に行き詰まった葵は、圭吾に八つ当たりし、その場へやって来た沙穂にある頼み事をします。
「沙穂、水泳部やろ。ヌード描かせてくれへん?水着でええから」
「それ本気?」
「冗談や、冗談」
「葵なんか大っ嫌いや!」
そう言って沙穂は美術部の部室を飛び出して行く。

これが、2場の直前のエピソード。

その構成がわかる前(つまりアイフェス!!で)は、何とも沙穂の演技が中途半端だと思っていたのです。沙穂の想いが見えない、と。
ところが、2場がエピローグ(翌日)ですから、“沙穂、どう思ってんの!?”という演技でOKだったのです!なんと、マジックです(笑)

構成がわかると、葵が主人公の物語ながら、裏の主人公は沙穂のように思えてきます。
必要に圭吾が沙穂にアタックして二人はいい仲になっていきますが、本当は沙穂は葵に想いを寄せているような……。

ちなみに2場で葵はキャンバスに布をかけたまま沙穂にも誰にもその絵を見せません。
ほとんどの場で絵を隠しているので真の意味に気付きづらいのですが、2場以外で隠されていた絵は最後に葵本人がめちゃめちゃに壊してしまいます。
その後、彼が絵に向かえたのか、それともキャンバスは真っ白のままなのか。それは、誰にもわかりません。

全てが腑に落ちた瞬間。

何とも挑戦的な舞台だったのです。




伊丹北がAI・HALLの舞台機構をフル活用して個々の胸に訴えたのなら、伊丹西はピッコロ中ホールの狭さを利用して熱気の渦に巻き込んだのかもしれません。
書き終えた今、なんとなくそんなことを思ったりします。

春季発表会の中日には行けなかったので、県立西宮とか宝塚とか県立尼崎とか神戸女学院とか、観たかったけど観られなかった学校も多くありました。
その結果、奇しくも伊丹の学校ふたつの紹介になってしまいましたねぇ。

しかし、絵を描くのも良いかも知れませんね。
次から写真撮影不可の演劇や大会は、立体図くらいをラフ画で描いたもの載せるのもいいかもって思ったり。

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