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高校演劇'16~近畿大会編~

なんと近畿大会について書くのは、10年ぶりのようです。
そして奇しくも2016年の近畿大会は10年ぶりの兵庫大会。これは偶然か?(笑)

11月25日(金)~27日(日)の3日間、神戸大倉山にある神戸文化ホール中ホールにて第51回近畿高等学校演劇研究大会が行われました。

今年の近畿大会、個人的に思うのは、兵庫代表、東播磨と長田、両校の不思議な偶然、運命ですよね~。

■兵庫 東播磨『アルプススタンドのはしの方』
全国大会へ行っちゃったよ......。

もちろん、文句なしです。
前日、同じ兵庫代表の雲雀丘『光が届くまで』が非常に良かったので、"霞んでしまうのでは?"と心配したりもしたのですが、こちらも県大会以上の出来で素晴らしい上演でした。

正直、県大会では全国まで行けるとは思わなかった。そこまでの突破力を持った作品には思えなかった。
もちろん、台本は巧みに計算されているし、空間の立ち上げも、演出もうまい。大きなダメはない作品。
もしかしたら、近畿大会では観客席を味方につけたのかも知れない。知らぬ間に、自分たちも甲子園のアルプススタンドのはしの方で、その青春に触れている気になってくる。醒めていたはずのアルプススタンドのはしの方(=観客席)が、いつの間にか熱気を帯びてくる。
県大会ではなかった反応が、観客から返ってくる。

こんなに素敵な作品だったっけ?

見終わったあと「今全国に王手をかけたぁぁぁ!」って思っちゃったもん(笑)
まだしばらく、東播磨の旅は続くようです。なので、多くは語りません。はい。


■京都 立命館『虹の彼方に』
もう一度、観たかった。個人的な次点校。

トランペットで吹かれている『Over the Rainbow』。
幕が上がると、丁寧につくられた舞台装置。どうやらそこは都市部の河原で、堤防の上にトランペットを吹く女性がいる。

高いテンションと、キレキレの演技。これはもう"劇団"と言ってもいい。それは立命館の伝統。舞台に高さの違いをつけるのも、同じ。
決して自然な演技ではない。つまり、魅せることを計算した演技。問答無用に観客を引き込んで、楽しませる。それは60分、止まることがない。それはそれで正解。

立命館と言えば、昔『人の川』という作品があった。"なんじゃこりゃあ!"と衝撃を受けた。
それは、乙女ちゃんの超絶早回しのセリフであったり、舞台空間の使い方であったり、テンションの高さであったり、そして、序盤で死体となりその後ずっと舞台上で転がっている乙女ちゃんであったり......。
その頃の衝撃そのままに、さらに超えてきた感じがした。

小学生、中学生、高校生、大学生、ホームレスに謎の女と、出てくる登場人物は多種多様。
小学生が秘密基地をつくったり、大学生がトランペットを吹きに来たり、ホームレスのおばさんを訪ねてくる女子高生がいたり。そこには恋もあったりして、それぞれにそれぞれの事情が見え隠れする。

テンション高いドタバタ劇が、終盤、シリアスに引き締まる。
いつもの日常が、行政代執行によって壊される。ホームレスのおばさんはどこへ行ったのかわからない。探そうと言ったり、探してはダメと言ったり、オレたちの秘密基地は無事だと言ったり。
「虹の彼方に行こう」と言ったのは謎の女。
結局、日常に帰る者、新しい生活をはじめる者、これまでと変わらない者とそれは様々。全員が「虹の彼方に」行けるわけじゃない。

"いま"は永遠ではないし、いずれは変わっていく。それは場所だけじゃなく人も。
その儚さを描いている気がして、急に切なくなる。淋しさと言えるかも知れない。

講評では酷評だったけれど、あそこは突っ込むべきポイントではなく、個人的には素晴らしいお芝居だった。




少し大阪に勢いがないかも?
去年の金蘭会は凄かったけど、今年の淀川工科は少し物足りず。瞬間瞬間では、淀川工科も大谷もキレイだったけれど、内側に切り込めなかった感じがする。
そういう意味では、踏み込んだのが清風南海だろうけど、一人芝居の演技や演出にもうちょっと工夫があれば!って個人的には。

上には書かなかったけれど、兵庫・雲雀丘『光が届くまで』も県大会とは全く違ってた。
時としてアクシデントはお芝居にとって強いプラスになる。いつもより高めのテンションが、演技をオーバーランさせる。それがうまく働いていたし、何より、県大会から1週間にも関わらず、更に良いものにしようと変えてきた。

しかし、なによりビックリしたのは徳島市立でした。
どんなにお金持ってるの!?って。高校演劇として規格外っちゃあ規格外。こんな舞台(装置)は初めて見た!

全国大会は来年、2017年の夏。
8月1日(火)~3日(木)の3日間、宮城県仙台市のイズミティ21で行われます。

さてはて。遠い遠いその地の劇場を、果たして甲子園のアルプススタンドのはしの方に変身させられるのか?そこが東播磨にとっての命題かも知れない。
出来れば『青春舞台』で観られたらいいのだけどね。
演劇をつくる者にとって、いろいろ勉強になるお芝居であることは、間違いないから。

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