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高校演劇'10〜兵庫県大会編〜

明石市西部市民会館で行われた2010年の兵庫県高校演劇研究会・中央合同発表会。
今年も残念ながら但馬支部は欠場で全15校。(来年は“復活”してねっ!)

いつからだろうか、県大会でも元気の無さが気になります……。
それでもここのところ、兵庫から全国大会へ出てるのですけどね。(大阪も同様なのかしらん???)
県大会に活気を取り戻したいと、切に願うばかりです。

おっと暗くなってはいけません!!
兵庫復活の兆しは見えてきたのですよ。

さてはて、それでは気になった作品をピックアップしていきましょう!!

■六甲学院『6人くらいのどっちつかずの男たち』
ぶっちぎりで最優秀賞!!(個人的には)

裁判員制度の模擬裁判が行われる
六甲のお芝居を見るのは二度目。
前回は2008年の県大会『あの時のあの背中、後ろ姿はいつも夕暮れ』でした。
短期間で驚きの進化を見せた六甲ですっ!

『12人の怒れる男たち』という舞台(映画が原作なのか)をモチーフとして書かれた創作脚本。
先輩(大学7回生)の卒論のために、集められた人たち。
会議室らしき部屋で繰り広げられる模擬裁判員たちの評議。
扱う事件は、『さるかに合戦』なんだってー!?(もちろん資料は絵本です)

演技力は今大会随一だったでしょう。
高校生は登場せず、年齢が上の人たちばかりの構成ですが、上手く演じられています。
笑いを狙った演出でないのも好印象です。
観客は楽しみながら、いつしか、『さるかに合戦』の深さに引き込まれていきます。

日常では意識しない、色んな関係性。
それがささやかに示唆される。

確かに審査員の先生方がおっしゃった通り、余分なセリフはあったかも知れません。
それは終わった後の話であって、上演中はまったく気になりませんでしたけど。

暗転の使い方も妙技です。
舞台転換は全くなく、登場人物の出入りもなく、ただ時間経過のためだけの暗転。
とても効果的に使われており感心しました。

ただ、最後、「メシでも食いに行きませんか?」と誘う(誘われる)ラストシーン。
カニ高いのに、先輩の反応が……。
それよりも、カニ食べに行くのかっ!?どうなんだっ???
そこらの表現があったら良かったかな。

上演後の拍手と客席の熱気は、まさしくホンモノであったことの証です。
純粋に、“あぁ、これが兵庫だよね”と思ったり。

惜しくも優秀賞に終わった本作ですが、何ともう一度観られるチャンスがあるそうですっ!

今週11月20日(土)宝塚ソリオホールでの宝塚演劇祭。近畿大会と日程が被っているのが唯一の難点でしょうか。
六甲学院の上演は11:00から。
他にも朗読なずな、雲雀丘学園中学校演劇部、雲雀丘学園高校演劇部の上演が楽しめるようです。入場料は500円とのこと。
第18回宝塚演劇祭の詳細はこちらから。


■県立伊丹西『境界線二〇一〇』
本当の最優秀賞

ケータイの表現が効果的っ!
真っ暗な空間に浮かび上がる、ケータイの液晶画面の光──。
“これは何だろう?”と始まる幕開き。
すっかり引き込まれてしまいます。

ケータイ=インターネットの表現が素晴らしく、その交わらない言葉が「全部繋がってるっ!」と気付いたのは、作品後半に入ってからでした。
全くもって、“今”という時代に切り込んだ「ある種の問題作」かもしれません。
大人や教師たちが届かない世界の……。

主力メンバーがチェンジして、まったく違う雰囲気の伊丹西。
でも、やっぱり伊丹西っぽい伊丹西。

主人公の南とその親友の離れていく心。
どうしても追いつかない。届かない。引き留められない。戻せない。そんな、もどかしい想い。
この二人の演技力が、この重い脚本を引っぱっていきます。

逆に言えば、それ以外の人たちには足らない部分もあるのです。
物語のキーとなる修もあまり印象に残りません。あ、いや、それは演出として正しいのか(?)。

ただ、一つダメを言うならば、もっとぐっと観客の心を掴んで欲しかった。
それは恐怖心かもしれないし、悔しさかもしれないし、絶望感かもしれない。
爽やかさが残ってしまうのが、もちろん伊丹西(兵庫)の良いところでもあるのですが、作品の本質まで迫り切れていない気がします。

しかし、あの境界線の表現はさすがです。
是非劇場で、その顛末をご覧ください。
3回くらい観なきゃ分かんないほど、難しい作品でもあるのですけど。

ふと、自分たちが出場した時の県大会で、傘を使ってパントマイムをしたことを思い出しました。


■県立加古川東『夏の夜の夢?』
“あっ、装置が良い”って思った!

装置の感じが良いよね。
実は去年から気になってるんだけど、この作者のカコ・トントンさんってもしかして──?

ま、それは良いとして、幕開きと共に出現した被服室とベランダの柵。
校舎の一角が示唆されてます。
窓の向こうにベランダがある奥行き感が、なんだかとっても良い感じなのです。

被服室を活動拠点とする演劇部が、次回公演のために騒動を起こす、という話です。
シェイクスピアの『夏の夜の夢』のエッセンスがちりばめられています。
個人的にはチェーホフの『三人姉妹』(登場人物たちがタイトルを間違えて覚えていて、繰り返し「三人芝居」と言うのですが、間違えていることに気付きませんでした(苦笑))に、去年神戸高校が演じた『SISTERS』を思い出したのですけどね。

芝居を引っぱっていく(そして常に騒動を起こす)、女の子の演技にキレとパンチ力があり、安心して観られます。
笑わすべくして笑わす、そしてCMネタを入れるっていうのは、どちらかというと伊丹西が得意とした手法ですね。

途中から出て来る演劇部OGの先輩が、幽霊だと他の登場人物たちがもっと信じ込めていると、もっと面白かったかも?と。
そういう意味では、ニアミスというか、そんなすれ違いで心が揺れる表現は、(役者側も)もっと楽しめたろうし、もっと細かく追えたと思います。

これぐらいのレベルの作品がバンバン出て来れば、盛り上がってくるのにね!


■県立伊丹北『そら とぶ ひつじ』
来年も戻っておいでよ

手作りの絵本やさんのお話
出来は6割くらいかな〜って感じがする。
脚本ではなく、舞台上の表現の出来がね。

世界で一品物の手作りの絵本をつくるお店の話だったのかな?
そのお店を切り盛りするのは、三人の若い女性たち。そこへ高校生の女の子ひとりがやって来て、物語は動き始めます。

もっとこの三人の関係性を掘り下げて欲しかったなぁって思うのです。
このお店をやることになった経緯とか、元々の知り合いなのか違うのか(八木とたくみは同級生みたいですけど)、経営も任されてるのかどうかとか。
直接的なセリフなんてなくていいんだけど、演技に現れていると良かったのに。

自分たちより若い女子高生の影響で、ちょっと素直になって、新しい一歩を踏み出す。何かを諦めてしまわないといけないのだけど。

その諦めたものの大きさがわかると、より深い作品になります。
私としては、泣ける話になったかも。(そう言えば、今大会、ひとつも泣いてない)

でもね。
私はこういう作品、好きなのです。

阪神支部で磨かれているだけあって、空間の使い方も上手いし、だったら県大会なんかで満足せず、もっともっと上を目指して欲しい。
だから、来年、戻っておいでって。

そーいえば、舞台奥側(本棚に近づくと)が照明的に暗いのが気になりましたけどね。


■県立東播磨『演奏隊?何それ?』
もう一つの最優秀賞

合宿での夜
ここの転換(明転)は昔から兵庫随一なのです。
そう思ったら、私が大好きなのに顧問の先生を知らない珍しい演劇部なのですね(笑)

60分間をいかに魅せるか。
それが暗転でなく明転を使う理由で、時間経過も表現しつつパフォーマンスとして舞台まで転換してしまう様は、初めて観た時には脱帽でした。
私も暗転を演技として見せる努力をしてきましたが、まったく違う考え手法でしたので。

それにしても演奏、もう少し聴かせて欲しいよね。

ここに六甲とまでは行かなくても、加古川東くらいの演技力が付けば、もう無敵なのですよ。

だから──なのかな。
東播磨には、もっと、他を寄せ付けないくらいの出来で近畿に行って欲しかった気がします。




終わってみれば、かなりテンションの上がった県大会。
それは、最終日の最終校が六甲だったから、ということも大きいのです。
あれを観た後、最近(自分の気付かないうちに)レベルを下げて高校演劇を観てるかも?と思ったりもしたのです。
終わりよければすべてよしとはよく言ったもので、六甲のおかげで全て良かった気もしますしね。
正直、初日はかなり低調でしたし……。

さて、今年の近畿大会は奈良県・田原本青垣生涯学習センター(どこだそれ?)です。

伊丹西『境界線二〇一〇』がどこまで頑張れるのか?東播磨『演奏隊?何それ?』がどこまで衝撃を与えられるのか?その辺が、気になるポイント。
今週末、11月19日(金)、20日(土)、21日(日)の3日間。
初日が平日なのは、痛いですねぇ。
なんたって、近畿大会として審査されるのは、金・土に出場する大阪・兵庫・京都・滋賀・奈良・和歌山の代表なのですから。

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